政府が定める「骨太の方針」における造船業の再生・強化施策についての動向です。
1. 骨太の方針における「造船再生」の位置づけ
政府は「経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)」において、造船業を単なる伝統産業としてではなく、経済安全保障の観点から自律性を維持・強化すべき国家的な戦略分野に指定しました。日本は貿易量の99.6%を海上輸送に依存しており、中東情勢の緊張など地政学リスクが高まる中、自国での船舶建造・修繕基盤の維持が生命線となるためです。
2. 「造船業再生ロードマップ」と明確な数値目標
政府および国土交通省が取りまとめた「造船業再生ロードマップ」では、以下のような野心的な数値目標と投資枠組みが設定されています。
- 建造量の倍増:2035年までに国内の年間建造能力を現在の約2倍となる1,800万総トンへ引き上げる。
- 官民1兆円規模の投資:大規模な設備増強(大型クレーンの増設や自動化ラインの導入等)に向けて、官民合わせて1兆円規模の投資実現を目指す枠組みを策定。
- 即時償却・税制優遇:巨額の資金と長期間を要する設備投資(納期7年超の大型クレーン等)を後押しするため、投資促進税制や「造船業再生基金」などの強力な支援スキームを活用。
3. 次世代船・LNG船の国内建造再開
脱炭素化(GX)への対応として、以下の高付加価値船の国内建造が重点化されています。
- LNG運搬船等の国内建造再開:エネルギー安定供給やデータセンター拡大に伴う電力需要を見越し、一時海外勢に押し切られていたLNG(液化天然ガス)運搬船の国内での建造再開に向けた官民連携を推進。
- アンモニア・水素燃料船:次世代燃料船の技術確立と標準化を世界に先駆けて目指す。
4. 技術革新(Physical AI・自動化)による課題克服
深刻な職人・溶接工不足、船員不足といった構造課題に対し、先端技術を活用した省力化が柱となっています。
- 造船現場のAI・ロボット化:AI造船ロボットの導入やデジタルツインを用いた次世代造船所の構築を進め、熟練技術に頼らない生産性を追求。
- 無人運航システム:自動操縦・無人運航船の実用化により、将来の船舶航行および造船技術の双方で差別化を図る。
5. 「国立ドック」構想と日米連携
防衛生産基盤強化法や経済安全保障推進法を活用し、国が主導して造船施設を整備・取得し民間に運用を委託する「国立ドック」構想の検討や、米国の造船再構築計画と連携した国際的な協力関係の構築も視野に入っています。
国策としての後押しにより、造船大手(今治造船、JMU、川崎重工等)をはじめ、塗料・バルブ・エレベーター・断熱材など周辺の技術系・ニッチな部材メーカー(中小型株)にまで投資と関心が波及する構造となっています。
関連銘柄
5411 JFE
6016 ジャパンエンジンコーポレーション
6023 ダイハツインフィニアース
6137 小池酸素工業
6302 住友重
6339 新東工業
7003 三井E&S
7004 カナデビア
7011 三菱重
7012 川重
7013 IHI
7014 名村造
7018 内海造
7022 サノヤスホールディングス
7245 大同メタル工業
8088 岩谷産業
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