生成AI(AI・クラウド時代)の爆発的な普及に伴い、データセンターが消費する電力と、そこから発生する「莫大な熱」の処理が世界的な大課題となっています。
特に最新のAI向けGPUは1基あたり数百〜1000W以上を消費するため、従来のエアコンのような空気の循環(空冷)だけでは物理的な冷却限界を迎えています。そのため、現在は「液冷(液体冷却)」への歴史的な大転換が急速に進んでいます。
サーバー冷却の最新トレンドと、日本の株式市場における注目株・インフラ関連銘柄を体系的に整理しました。
サーバー冷却の3大最新トレンド
液冷へのシフトは、大きく分けて以下の3つのアプローチで進められています。
- 直接液冷方式(DLC:Direct Liquid Cooling / コールドプレート)最も現実的で、現在主流になりつつある第2世代の技術です。サーバー内の高発熱チップ(CPU/GPU)に「コールドプレート」と呼ばれる金属板を密着させ、その中に冷却液を循環させてピンポイントで熱を奪います。
- 水冷リアドア方式(ハイブリッド型)サーバーラックの背面(ドア部分)に冷水を通した熱交換器を設置し、サーバーから出る熱風をその場で一気に冷やす仕組みです。既存の空冷設備を活かしながら段階的にアップグレードできるため、都市型データセンター等で導入が先行しています。
- 液浸冷却方式(Immersion Cooling)サーバーを電気を通さない特殊な「絶縁性オイル(冷媒)」に丸ごと沈めて冷却する、究極の第3世代技術です。ファンが不要になるため騒音がなく、空冷と比べて冷却電力を90%以上削減できる圧倒的な省エネ性を持ちますが、メンテナンス性や専用設備のコストに課題があります。
主な関連銘柄(セクター別)
データセンターの冷却インフラは、機器そのものだけでなく、熱交換器、配管、ポンプ、建屋建設、運用ソフトなど多岐にわたる「重厚長大・物理アセット(HALO)」の世界です。
1. 冷却装置・水冷システム(本命・中小型)
サーバーラックや内部の冷却用コンポーネントを直接提供する、最もテーマ性の強いセクターです。
- 三桜工業 (5807):自動車のブレーキチューブなどで培った配管・熱交換技術を応用し、「サーバーラック用 水冷冷却装置」を展開。データセンター液冷化の本命株の一つとして注目されています。
- 住友精密工業 (東証スタンダード: 6355):航空機部品や半導体製造装置で高い精密加工技術を誇ります。液冷化のコア部品となる「高性能CPU冷却器」を手掛けており、市場でのシェアを高めています。
- 日本フォームサービス (7869):サーバーラックの老舗。米国の液冷リーダー企業(GRC社など)と提携し、次世代の液浸冷却装置「ICEraQ」を国内市場向けに展開しており、液浸ブームの急先鋒です。
2. 空調設備・総合冷熱インフラ(大手・安定)
建屋全体のチラー(冷却水を冷やす装置)や大型空調、あるいは冷却インフラ全体を取り仕切る大手プレイヤーです。
- ダイキン工業 (6367):世界首位の空調メーカー。データセンター向けの大型チラーや、独自の高効率冷却システムを世界規模で展開しており、世界的なDC増設の恩恵を最も受ける巨大企業です。
- 高砂熱学工業 (1969) / 三機工業 (1961):データセンターの「空調・衛生設備工事」の国内大手。水冷やリアドア型など、高度なエンジニアリングが必要とされる次世代型DCの施工実績を伸ばしています。
- 日比谷総合設備 (1982):NTTグループ向けの通信インフラ工事に強み。NTTデータやIIJと共同で、都市型AIデータセンター向けの空冷+液冷ハイブリッド冷却構成の共同検証を開始するなど、実装段階での動きが非常に速い企業です。
3. 液浸冷却・ゼネコン(次世代インフラ)
液浸冷却タンクの設置や、新築される「水冷前提の超大型AIデータセンター」の建設・システム構築を担います。
- 三菱重工業 (7011):ディフェンスや船舶だけでなく、データセンターの液浸冷却システムでも最有力。KDDIやNECネッツエスアイと共同で、「コンテナ型液浸データセンター」の実証・商用化を進めており、冷却電力を大幅に削減する技術を持っています。
- 大成建設 (1801):ゼネコン大手の中でデータセンター建設に強み。独自開発の液浸冷却システム「爽空 (sola)」を展開しており、建築の段階から冷却インフラをパッケージで提案できる強みがあります。
- NECネッツエスアイ (1973):上記、三菱重工やKDDIとの液浸コンテナ共同開発で、システムのインテグレーション(保守・運用・構築)を担当。運用面での中心的な役割を担っています。
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