全東信の破綻

2026年7月6日、クレジットカードの早期決済代行を手がける「株式会社全東信(ぜんとうしん)」(本社:大阪市)が大阪地方裁判所から破産手続きの開始決定を受け、経営破綻しました。

負債総額は2025年3月末時点で約1,259億2,900万円に上り、2026年で最大規模の大型倒産となっています。

全国の多くの飲食店やサービス業が利用していたインフラだったため、現在、業界全体に大きな衝撃が広がっています。破綻の背景や、利用店舗(加盟店)への影響について整理します。

1. 全東信のビジネスモデルと特徴

全東信は、主に飲食店を対象に「クレジットカード売上の早期決済代行」を行っていた会社です。 通常、クレジットカードの売上金がカード会社から店舗に入金されるまでには数週間〜1ヶ月ほどのタイムラグがありますが、全東信はそれを「週2回・月6回」といった驚異的なハイサイクルで立て替え払い(先払い)していました。

  • 顧客層: 資金の回転を速めたい中小の飲食店がメイン。
  • 特に強い領域: 夜の街(スナック、キャバクラなど)といった、通常のカード会社の直接審査が通りにくい、あるいは嫌われがちな業種に対しても柔軟に決済の仕組みを提供していたため、これらの業種にとっては死活的な資金繰りインフラとなっていました。最盛期には全国で約20万店が利用していたとされています。

2. 破綻に至った主な原因

破綻の引き金は、コロナ禍による業績悪化と、その後に発覚した「刑事事件(不祥事)」による信用失墜です。

  • コロナ禍での打撃: メイン顧客である飲食店が休業や時短営業を余儀なくされ、取扱高が激減。2期連続で大幅な赤字を計上していました。
  • 東京支社での不正事件(2024年): 2024年1月、同社東京支社の幹部らが「本来審査に通らない飲食店」の加盟店契約を他人名義で不正に結んだとして逮捕されました。法人としての全東信も組織犯罪処罰法違反の疑いで書類送検され、これが決定打となって金融機関からの資金調達(立替金の原資)が完全にストップし、今回の自己破産へと追い込まれました。

3. 利用店舗(加盟店)への深刻な影響(3つのリスク)

破産手続きの開始に伴い、全東信の決済システムは即時停止しています。利用していた店舗には、主に以下のような大打撃が生じています。

① 売上金の直接毀損(回収不能リスク)

すでにカード決済されたものの、全東信からまだ店舗へ振り込まれていない「未収の売上金」は、原則として「破産債権」扱いとなります。一般の破産債権は、税金や未払い賃金などが支払われた後の残余財産から配当されるため、実質的にほぼ全額が回収困難(焦げ付き)になるとみられています。飲食業界団体(日本飲食団体連合会など)も強く注意を呼びかけています。

② 入金サイクル変化による「黒字倒産」の危機

「週2回入金」の超短期サイクルを前提に、家賃や仕入れ、人件費の支払いを組み立てていた店舗は、入金が急ストップしたことで一気にキャッシュアウト(資金ショート)するリスクがあります。未収金が返ってこないダメージに加え、資金の回転が止まることによる二次的な連鎖倒産が懸念されています。

③ キャッシュレス決済の空白期間と「受け皿」問題

現在、全東信の決済端末はすべて使用できなくなっています。他社の決済サービス(SquareやAirペイなど)へ急ぎ乗り換える必要がありますが、申し込みから開通までの数日間〜数週間は「カードが使えない(現金のみ)」状態になり、機会損失が発生します。

また、審査の厳しいナイト系(スナック、キャバクラ等)の店舗は、一般的な決済代行会社での新規契約が難しく、受け皿が見つかりにくいという構造的な問題も浮き彫りになっています。

⚠️ 利用店舗の当面の対応策

  1. 端末の即時使用停止: 傷口を広げないよう、全東信の決済端末での受付を即座に止める。
  2. データの保全: 未入金となっているカード売上のレシートや伝票、管理画面のデータ等の証拠をすべて手元に記録・保管する。
  3. 代替手段の即時確保: 最短当日〜数日で導入できる大手モバイル決済等を仮の「つなぎ」として即時申請し、キャッシュレス決済の停止期間を最小限に抑える。
  4. 資金繰り表の引き直し: 金融機関や税理士、商工会議所等へ早めに相談し、運転資金の融資(つなぎ融資)の手配に動く。

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