多孔性金属錯体(MOF)とは 🧪
多孔性金属錯体(MOF:Metal Organic Frameworks)は、近年、化学・材料科学分野で最も注目されている材料の一つです。
1. 構造と特徴
項目 | 詳細 |
定義 | 金属イオンとそれらを架橋する**有機配位子(リンカー)**が規則正しく自己組織化することで形成される、結晶性の多孔質材料です。PCP(Porous Coordination Polymer:多孔性配位高分子)とも呼ばれます。 |
特徴 | 🐜 超多孔質構造: ジャングルジムや分子ケージのような骨格を持ち、内部にナノサイズの規則的な細孔(穴)が無数に空いています。 |
比表面積 | わずか1グラムのMOFの表面積が、テニスコートやサッカー場に匹敵するほど(数百〜数千 m2/g)巨大になることが最大の特長です。 |
設計の自由度 | 金属イオンと有機配位子の組み合わせを変えることで、細孔のサイズ、形状、内部の化学的環境を自由に設計・制御できます(デザイン性の高い材料)。 |
2. 応用分野
そのユニークな構造と巨大な表面積から、様々な産業分野での応用が期待されています。
- 環境・エネルギー:
- ガス吸着・分離:発電所や工場からの$\text{CO}_2$(二酸化炭素)の効率的な回収・分離。
- ガス貯蔵:水素やメタンなどの次世代燃料ガスの高密度貯蔵・輸送(小型軽量化)。
- 触媒:化学反応を促進する高機能触媒。
- 医療・バイオ:
- 薬物送達システム(DDS):MOFの細孔に薬剤を封入し、必要な場所で放出させる技術。
- センサー:特定の分子を検出する高感度センサー。
多孔性金属錯体(MOF)関連銘柄(日本)
MOFは実用化に向けた研究開発の最終段階にある技術であり、関連する事業に取り組んでいる上場企業や、技術を基盤とする非上場ベンチャーがあります。
銘柄コード | 企業名 | 関連する事業・取り組み |
5706 | 三井金属鉱業 | CO2吸着材の実用化に注力。独自のMOFを用いた$\text{CO}_2$分離・回収装置の開発と実証試験を進めている。 |
4021 | 日産化学 | MOFの構成要素である**有機配位子(リンカー)**などの化学品・機能材料を提供。高機能材料分野での関与が考えられる。 |
4540 | 富士フイルム (富士フイルムホールディングス) | グループ会社の富士フイルム和光純薬が、研究開発用のMOF(PCP)リガンド・リンカーなどの試薬を取り扱っている。 |
4004 | レゾナック | 過去に$\text{CO}_2$分離・精製材料基盤技術開発プロジェクトに参加実績があり、高機能化学品やガス分離膜技術への応用が期待される。 |
【注目されるベンチャー企業】
- 株式会社Atomis(アトミス):京都大学発のベンチャーで、PCP/MOF技術を基盤に、高圧ガス容器の小型化(CubiTan®)や宇宙開発向け低圧タンクなどを開発している。(非上場)
- SyncMOF株式会社:名古屋大学発のベンチャーで、MOFの開発設備とコンサルティングを行っている。(非上場)