「トランプ減税OBBB」とは、正式名称を「One Big Beautiful Bill Act(一つの大きく美しい法案)」と言い、ドナルド・トランプ元大統領(および次期大統領候補)が提唱している大規模な減税・歳出法案のことです。
この名称は、トランプ氏が口癖のように使っていたフレーズからきており、彼の好む派手さが印象付けられています。
OBBB法案の主な内容と目的
OBBB法案は、非常に広範な内容を包括しており、主に以下の5つの分野に分けられます。
税制改革:
2017年の減税・雇用法(TCJA)に基づく個人・法人税減税の恒久化: これが法案の核心であり、2025年末に期限を迎える大型減税を恒久的なものにすることを目指しています。
チップ収入や残業手当への課税免除: 接客業や時間外労働にかかる所得税を免除し、労働集約職種の実質所得を支援する目的があります。
医療・福祉改革:
メディケイド(低所得者向け公的医療保険)の受給要件厳格化・歳出削減: 18歳から64歳の非障害者・非高齢者のメディケイド受給者に対し、週20時間以上の就労・就学・ボランティアを義務化することで、非生産者階級を保険対象から排除する目的があります。これにより、数百万人規模の無保険者増加が懸念されています。
オバマケア(医療費負担適正化法)で定める医療保険取引所の規則改定: これも無保険者増加に繋がる可能性があります。
家族・文化政策:
新生児への1万ドルボーナス支給: 新生児1人につき1万ドルを支給し、少子化対策や家庭支援、人口増加を目的としています。
犯罪・治安政策:
死刑対象犯罪の拡大: 人身売買犯、フェンタニル密売犯、警察官殺害犯に対し、死刑を連邦法で義務化するなど、対象犯罪を拡大する方針です。
公共インフラ・経済主権政策:
米国内製造企業へのインセンティブ: 米国内で製造・組立を行う企業に対し、法人税の特別控除、即時償却、再投資減税などの包括的優遇策を導入し、中国などへの依存是正と米製造業の国内回帰を促進する目的があります。
次世代ミサイル防衛構想「ゴールデンドーム」関連支出の増額。
国境管理の強化のための予算措置。
財政への影響と懸念
OBBB法案は、大規模な減税と歳出増加を含むため、米国連邦政府の財政赤字を大幅に拡大させることが予測されています。一部の試算では、10年間で数兆ドル規模の財政赤字を追加するとされています。この財政悪化は、米国債やドルの信認を損ない、ドル離れや米国金融市場の不安定化リスクを高める可能性が指摘されています。
また、法案には連邦政府の債務上限の引き上げも盛り込まれており、トランプ政権下の財政運営における資金調達制限が一時的に解消されることになります。
OBBB法案は、トランプ氏の政策公約を包括的に実現しようとするものであり、その成立は米国経済や社会に大きな影響を与えると考えられています。