防衛省が進めている「全国で130棟の弾薬庫(火薬庫)増設」は、日本の防衛政策の大きな転換点である「反撃能力(敵基地攻撃能力)」の確保と、有事の際に戦い続けるための「継戦能力」の強化を目的とした極めて重要な計画です。
詳細を以下の4つのポイントでまとめました。
1. なぜ「130棟」も増やすのか?
現在、日本全国には約1,400棟の弾薬庫がありますが、その多くは老朽化しており、また保管スペースも不足しています。
- 反撃能力の基盤: 自国を守るための「長射程ミサイル(スタンド・オフ・ミサイル)」を大量に配備・保管する場所が必要です。
- 継戦能力の向上: 従来の自衛隊は「弾薬不足」が課題とされてきました。弾薬の備蓄を大幅に増やすことで、有事の際にも息切れせずに活動を継続できる体制を目指しています。
2. どこに、いつまでに造るのか?
政府は2032年度までに、全国の自衛隊施設内に約130棟を新設する方針です。
| 主な候補地・着工場所 | 概要 |
| 北海道(多田分屯地など) | 広大な敷地を活かした大規模な備蓄拠点。 |
| 青森県(大湊地方総監部) | 海上自衛隊の拠点として大型弾薬庫を整備。 |
| 京都府(祝園分屯地) | 国内最大級の弾薬庫群。さらなる拡張が計画されています。 |
| 大分県(大分分屯地) | 長射程ミサイルの重要拠点として複数棟の建設が進む。 |
| 沖縄県・九州各地 | 南西諸島の防衛強化のため、宮崎(えびの)や沖縄(沖縄訓練場)でも整備が進む。 |
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3. 保管されるものは何か?
これまでの小銃弾や魚雷だけでなく、新たに導入される大型ミサイルが主眼となっています。
- トマホーク: アメリカから導入する巡航ミサイル。
- 12式地対艦誘導弾(能力向上型): 日本が独自に開発する長射程ミサイル。 これらは従来のミサイルよりサイズが大きいため、それに対応した「大型弾薬庫」の建設が進められています。
4. 懸念点と現状の課題
この計画に対しては、各地で以下のような議論や反対運動も起きています。
- 住民の不安: 「住宅地の近くに弾薬庫ができると、有事の際に真っ先に攻撃対象(標的)になるのではないか」という懸念が、大分や京都などで根強くあります。
- 情報の透明性: 安全保障上の理由から、どの施設にどの程度の弾薬が保管されるか詳細は開示されないことが多いため、住民への説明不足を指摘する声もあります。
現在の進捗状況としては、すでに大分や青森などで着工が始まっており、2025年度予算案でもさらなる建設費用が計上されています。
全国130棟の弾薬庫増設に関連する銘柄は、大きく分けて「建設・インフラ」、「弾薬・火薬」、「保管される装備品(ミサイル)」の3つのカテゴリーに分類されます。
国策として巨額の予算(2023年度からの5年間で約5兆円の施設整備費)が投じられるため、長期的な需要が見込まれています。
1. 建設・土木関連(弾薬庫の建設)
弾薬庫は特殊な防爆構造が必要なため、防衛省案件の実績が豊富なゼネコンやエンジニアリング企業が関わります。
- 大成建設 (1801) / 清水建設 (1803) / 鹿島 (1806)
- 大型の防衛施設や地下施設の建設実績が豊富です。
- 東亜建設工業 (1885) / 五洋建設 (1808)
- 弾薬庫が建設される青森(大湊)や沖縄など、港湾・臨海部の土木工事に強みを持ちます。
- ショーボンドホールディングス (1414)
- コンクリート構造物の補修・補強に特化。既存の老朽化した弾薬庫(約1,400棟)の改修需要に関連します。
2. 火薬・弾薬メーカー
弾薬庫が増えるということは、中身である弾薬の生産・保管・管理の需要も増えることを意味します。
- NOF (日本油脂) (4403)
- 防衛用火薬の国内最大手。 弾薬やミサイルの推進薬を製造しており、備蓄増強の直接的な恩恵を受けます。
- 細谷火工 (4274)
- 照明弾や発煙筒など火工品の専業。防衛予算増額時に物色されやすい「防衛関連」の代表的な中小型株です。
- 日本工機 (5743) ※非上場:関係会社に注目
- 各種砲弾・弾薬の製造。親会社のJFEホールディングス (5411) や、取引のある企業が意識されます。
3. ミサイル・発射装置関連
今回増設される弾薬庫の目玉は、大型の「スタンド・オフ・ミサイル」の保管です。
- 三菱重工業 (7011)
- 防衛銘柄の本命。 長射程ミサイル(12式地対艦誘導弾の能力向上型など)の開発・生産を一手に引き受けています。
- 日本製鋼所 (5631)
- 火砲やミサイル発射装置の製造。保管だけでなく、運搬や発射に必要なシステムの需要に関連します。
- 三菱電機 (6503)
- ミサイルの誘導システムや、弾薬庫周辺の監視・防犯セキュリティシステムに強みを持ちます。
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