2025/11/6
高市首相は、参議院代表質問において、東京・南鳥島周辺海域でのレアアース開発について言及しました。
参院代表質問での答弁の要点
高市首相は、南鳥島周辺海域でのレアアース開発に関して、以下のように答弁しました。
- 日米協力の重要性:
- 多様な調達手段を確保することは、日本とアメリカ双方にとって重要であると認識を示しました。
- 今後の対応:
- 具体的な協力の進め方を検討していく考えを表明しました。
この答弁は、重要鉱物資源のサプライチェーン強化という経済安全保障の観点から、日米共同での開発協力に強い意欲を示したものです。
背景となる取り組み
高市氏は、過去に内閣府特命担当大臣として、南鳥島周辺のレアアース開発に取り組んできました。
- 技術開発:
- 内閣府の戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)において、南鳥島周辺の深海底(約6,000メートル)からのレアアース泥を回収する技術開発を推進しています。
- 令和7年度中には、実際の海域で揚泥の技術実証を行うための準備が進められています。
- 産業化への意欲:
- 将来的な鉱区の設定、すなわち国産レアアースの産業化に向けて、しっかり取り組んでいくという姿勢を一貫して示しています。
これらの取り組みは、特定の国に依存しない自立的な重要鉱物資源の供給体制を確立することを目指しています。
南鳥島沖のレアアースは、日本の資源戦略において非常に重要な位置を占めています。
- 埋蔵量とポテンシャル
莫大な量: 2012年に南鳥島沖の排他的経済水域(EEZ)内で、レアアースを豊富に含む「レアアース泥」が発見されました。その埋蔵量は、日本の国内消費量の数百年分に相当すると推定されており、非常に大規模な資源ポテンシャルを秘めています。
高品位: 中国の陸上鉱山の20倍もの品位を持つ「超高濃度レアアース泥」であることが確認されており、経済的な採掘の可能性が高まります。
広大な範囲: 音波探査の結果、九州の面積よりも広い約4万4000平方キロメートルの範囲に資源が眠っていると見られています。コバルトなど他のレアメタルも大量に含まれることが判明しています。
- 開発状況と課題
技術開発: 水深5,000m~6,000mという深海からの採掘・揚泥(泥を引き上げる)は非常に技術的な難易度が高いです。これまで、採掘・解泥・揚泥試験が成功しており、約70トン/日の揚泥実績も達成しています。
試験掘削の予定: 海洋研究開発機構(JAMSTEC)は、2026年1月に地球深部探査船「ちきゅう」を使って、南鳥島沖でレアアース泥の試験掘削を開始する予定と報じられています。これが成功すれば世界初の試みとなります。
経済性: 初期段階では、採掘コストや環境への影響、採算性などが不確実な課題として挙げられています。しかし、粒径分離によってレアアースを効率よく濃縮する技術も確立されており、経済性を向上させる努力が続けられています。
政府の取り組み: 日本政府は「海洋開発等重点戦略」において、南鳥島沖のレアアース泥を活用し、国内での供給網構築につなげるべく、2028年度以降にレアアースの国内生産体制を整える目標を示しています。鉱業法に基づく鉱区設定に必要な調査や、採鉱から製錬、精製までの一連の生産プロセスの実証が求められています。
関連企業: 東洋エンジニアリング(洋エンジ)など、資源開発技術やサブシー技術を持つ企業が、海底6000mからのレアアース泥回収システムの技術開発に携わっており、関連銘柄としても注目されています。
- 戦略的意義
中国への依存脱却: レアアースは、ハイテク産業に不可欠な金属元素でありながら、その供給は長らく中国に大きく依存してきました。南鳥島沖のレアアース開発は、この中国への依存度を低減し、日本の経済安全保障を強化する上で極めて重要です。
資源大国化への期待: もし南鳥島レアアースの開発が本格化すれば、日本が資源小国から一転して資源大国となる可能性を秘めています。
南鳥島沖のレアアース開発は、技術的な挑戦と経済的な課題を抱えながらも、日本の将来の産業と経済安全保障を左右する可能性のある、国家的なプロジェクトとして推進されています。
レアアース関連銘柄
1662 石油資源
2768 双日
3036 アルコニクス
3556 リネット
4004 レゾナック
4063 信越化
5711 三菱マ
5714 DOWA
5724 アサカ理研
5857 ARE
6269 三井海洋
6297 鉱研工業
7456 松田産業
7485 岡谷鋼機
8002 丸紅
8015 豊田通商
8031 三井物
8053 住友商
8058 三菱商
8103 明和産
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